多くの一般企業が「他社サービスとの差別化」や「独創的な動画クリエイティブ」を軸に動画広告を作成していく一方で、金融機関や銀行は差別化に焦点を絞った動画広告が打ち出しづらい傾向にあります。

その背景には「預金の引き出し」や「振込手数料」などの各種手数料に大した差が無く、各社が提供する金融サービスにも似たようなものが数多く存在するといった事情が関係しています。

金融系ならではの事情を気にしなければならない動画マーケティング担当者は、一体何に焦点を絞って動画広告を打つべきなのでしょうか。

今回の記事では金融機関や銀行の動画広告成功事例を解説しながら、動画マーケティング担当者がおさえておきたい2つの要素を取り出していきます。

クロスチャネル展開による「ATM手数料0円」認知率の向上

日本の某銀行は「コンビニATM手数料0円」を認知してもらうキャンペーンを動画広告にて作成しました。

キャンペーンを作成した某銀行は、Web上の動画広告を軸としながら新聞や雑誌、交通広告といったオフライン空間へのチャネル展開を約3ヶ月間行いました。

そのキャンペーンで利用した動画広告は「アイコン化したグラフィック」を「アニメーション」として作成したもので、銀行サービスが持つ「堅い」というイメージを「親しみやすさ」に変換したものでした。

結果は320万回の試聴完了数を記録、サイト誘導数は約13.8万人を記録しました。

この動画広告をリリースした銀行は個人に特化したインターネット銀行として知られており、金融サービスをより身近なものにするための活動を続けてきた銀行です。

まさに「堅い」や「とっつきにくい」などの従来の銀行サービスが抱えていた課題を克服した事例といえるでしょう。

また、このキャンペーンでは動画広告のリーチを「認知」と「記憶」の要素から考えており、興味深いデータが集計されています。

動画広告を「Web広告」と「交通広告」の2つのチャネルから集計した結果、動画広告それ自体の認知率は「交通広告」が高かったものの、「コンビニATM手数料0円」の記憶者数については「Web広告」が上回りました。

つまり、Web広告の方が「コンビニATM手数料0円」というメッセージを効率良く届けられたのです。

この結果から動画広告それ自体を認知させるための手法としては「交通広告」が効果的で、メッセージの浸透は「Web広告」の方が効率的だと判断できるのではないでしょうか。

動画広告をコンバージョンの「きっかけ」として捉える

もちろんリリースする動画広告によって異なる結果が出る可能性も考えられるため一概にはいえませんが、動画広告のリーチを「認知」と「記憶」の要素から見ていくと次なる施策が打ちやすくなるのではないでしょうか。

実際このキャンペーンを行った某銀行のマーケティング担当者は「動画視聴後にサイトへアクセスしないユーザー」や「サイトにアクセスしたもののコンバージョンに至らないユーザー」の施策設計に乗り出しています。

マーケティング手法の始まりの段階である「認知」の壁を動画広告によって乗り越えた結果、「いかにコンバージョン率を上げられるか」という次のフェーズに入ることができたのです。

したがって動画広告を出稿する際には、動画広告それ自体の効果を直接的なコンバージョンに結びつけるのではなく、「試聴完了数」や「サイト誘導数」といったコンバージョンの「きっかけ」に結びつけることが重要です。

時には広告出稿後にアンケートをとるなどして、「認知率」と「記憶率」の両方からデータを集計するのも必要となるでしょう。

動画マーケティング担当者は、動画広告の目的が「認知」であることを企画段階から宣言しておくと良いかもしれません。

活用シーンをイメージさせて中長期的なコンバージョン獲得を目指す

先ほどの事例では「コンビニATM手数料0円」といった具体的なメッセージの認知・記憶が動画広告の中心にありましたが、特定のメッセージが無い場合でも動画広告の活用は有効です。

日本のある銀行では、銀行サービスの「活用シーン」をイメージさせるための動画広告を作成しました。

従来の広告では静止画広告を利用することが多く、サービス内容や機能面の訴求が行えるとはいえ、多くの情報を伝えるには不十分でした。

また、顕在的なユーザーに訴求することになってしまうため金融機関や銀行同士で「顧客の奪い合い」が起こりやすく、安定したコンバージョンが得られなくなっていたのです。

そこで動画が持つ柔軟性や多彩な表現を利用して「潜在的なユーザー獲得」へと舵を切りました。

銀行サービスそのものでは他社との差別化が難しい業種であることを認識した上で、新たなユーザー層へアプローチをひろげていった成功事例といえます。

静止画広告と同様のKPIを指標としない

先述の事例と重なる部分ではありますが、動画広告の効果を測る指標はいわゆるマーケティング目標のKPIと同じものにしない方が良いでしょう。

なぜなら、動画広告の効果を最も期待できるのは「認知」や「中長期的なコンバージョン獲得」だからです。

動画広告では静止画広告のように文字や画像が固定されることがありません。画面が常に変化し続けることで、視聴者の抱く印象も変化していきます。

その特徴を最大限活用するならば、興味や関心を惹きつける動画コンテンツを配信し、新たなユーザー層獲得へ向けた施策設計へと踏み切るべきなのです。

「既存の静止画広告との役割を分ける」あるいは「動画広告のパターンをいくつか作成する」などして、動画広告キャンペーン独自の目標を立てると、中長期的なコンバージョン獲得に向けて見るべき数字が分かってきます。

社員インタビューなどで「親しみやすさ」を演出

ある海外の金融機関は社内風景を背景においた「社員インタビュー」「社員交流」の動画広告を作成し、「親しみやすさ」の演出に成功しました。

金融系の企業にはどこかとっつきにくいイメージがありますが、それは海外でも同じです。誰でもデリケートなものである「お金」を預けたり借りたりする相手は慎重に選ぶことでしょう。

普段使いをする銀行や融資を受ける金融機関は長く付き合う相手として信用でき、かつ親しみやすい存在である必要があります。そして、より信用できる要素として「透明性」が挙げられます。

日本ではなかなか企業で働く個人が「動画広告」や「テレビCM」に出演することはありませんが、海外の成功事例を参考に「透明性」を意識した動画広告キャンペーンを打ち出してみるのも良いかもしれません。

動画広告作成2つのポイント

ここまで3つの金融機関・銀行の動画広告成功事例を紹介してきましたが、いずれの事例にも共通している要素が「身近であること」でした。

生活が多様化する社会の中で、金融機関や銀行は「顧客に寄り添ったサービスを提供し続けます」といったメッセージを訴求していく必要があるのかもしれません。

動画広告キャンペーンを作成する際には「中長期的なコンバージョン獲得」と「金融系のイメージを覆す動画」の2点をおさえて企画を行うと良いでしょう。

(画像はPixabayより)